「安全」にお金がかかる時代~鍵屋の生き残り戦略

つい数十年前まで、わが国では「鍵」は我々一般庶民にとって必要のないものであり、一部の富裕層のためのものであった。それも宝飾品としての使用であり、防犯の意味を成していなかった。つまり、それほど治安がよい世の中だったわけである。しかし昭和40年代に全国各地で住宅団地の建設が始まるとともに、鍵の需要は急速に拡大する。その後需要は住宅のみならず自動車等にも飛び移り、鍵は生活必需品として欠かすことのできないものとなったのである。その後社会不安や犯罪の高度化等を背景とし、庶民の防犯意識が高まりに合わせ、「鍵屋」は従来の鍵の製造・販売といった領域から、トラブル対応などの出張修理サービスまでに事業領域を拡大してきているのである。ここで簡単に整理すると鍵屋はおおまかに、以下の2タイプに分かれる。1.「キースミス型」の鍵屋これはホームセンターなどでよく見かける、店頭で合鍵の作成・販売を行う鍵屋のことである。2.「ロックスミス型」の鍵屋これは依頼先に訪問して作業をし、錠前の取り扱いや解錠出張サービスを行う鍵屋のことである。最近では、フランチャイズ展開の「ロックスミス」型が店舗数を拡大している。一人で鍵を複数所有するのが当たり前となり、また住宅のリフォーム需要等に合わせて鍵の交換が予想されることから、「鍵屋」の潜在的な需要は大きいと考えられる。しかし一方で、近年は一口に鍵といってもシリンダー錠から生体認証まで、鍵の仕組み自体も高度化してきている。鍵屋は、従来の製造・販売・修理・トラブル対応といった領域から、防犯システム全体へ、そしてセキュリティ全般のスペシャリストとして相談に対応する等の新たなサービスを開拓することが、ひとつ生き残りに求められる方向性となるであろう。これが鍵屋にとってのひとつ、まさに「キー」になりそうなポイントである。蛇足ではあるが、「鍵を掛ける、閉める」は誤用であり、本来は「鍵で錠前を掛ける、閉める」というのが正しい使用法である。しかしこれからは鍵で錠前を掛けるのではなく、指紋・静脈で錠前を掛けるのが普通となる時代もそう遠くはないであろう。医者や看護師の経歴を持つ鍵屋が現れることもあるかもしれない。